オネエサンがきたら
美砂


いつもそのうち
アレがはじまる
アレがなにかはわからないが
アレは
どこまでもきこえているだろう
主人に連れて行ってもらったウミや
思い切り走れるコウエン
みるだけで引き返してきた、なにも知らない道のさきまで
だってアレは耳を開いて奥の奥へ
頭のほうによせてゆく
頭がみる ながれてゆく いつまでも散歩をするように

アレは
そんなにどうしたのというくらい
何重にもかさなって僕をおびやかしたかと思うと
とつぜんかるく
だれかの足音か
風とみまちがうほどに
せっきんしてくる
小さく飛び跳ねていたかと思うと
助走をつけてジャンプしたりする
遠くまであきれるくらい遠く
僕の目は空をみあげるけれど
そこにはなんにもない

いつまでたっても
スガタのないまま
荒れ狂ったり
きえいりそうになったりしながら
つづく
そしておわる
そしてはじまる
なにか、なにかをいいたいんだと
おもう、いっしょうけんめい、
僕が主人にうったえるのとおなじように
こぼれおちてゆくのを
どうしようもないような
どうしてあげたらよいのか
ときどき
ふるえるきぶんが
たとえようがなく
さみしいのかなつかしいのか
つぎのつぎ、つぎからつぎを
まちわびていることにきづく
つながってつづいて
そしてときどきぼくは
ねむってしまっていて
はっとしたとき
アレがまだつづいていると
たまらなく満ち足りたきもちがするんだ



自由詩 オネエサンがきたら Copyright 美砂 2012-11-16 19:34:39
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