頂きの眺め
HAL

いつもいちばんでありたいと切磋琢磨し
それを邪魔するものを追い払いまたは粛清し

それなりの歳月はかかったけれどようやくにきみは頂きに立った
あれほどに頂きから視える世界を眺めたいと願った
きみの夢はやっと叶った

さあ教えてくれないか
頂きから視えるこの世界が
どんなものであったのかを

その問いに沈黙するきみ
ぼくが代わりにきみが頂きから視た世界を
よければ言ってあげようか
ぼくには頂きに立たなくても視えるから

きみが視たのは
地平の果てまで草木1本も
生えていない荒地だ

かつては森があり鳥が飛び動物が生きる土地だった
それを荒地をしてしまったのはなによりもきみなんだと
浅はかで愚かなきみはようやくに知る
こんなはずじゃなかったと

しかしきみの愚かさが
しかしきみの憐れさが
きみの眼を射抜くだろう

そう権力を握ろうとするものは
頂きに立ったときその荒地を眺め
自分の間違いに気づくんだ
自分の浅はかさを知るんだ

多くの市井のひとびとは先人からの知恵に学び
不幸になるのは分かっているから頂きに立とうとは想わないんだよ


自由詩 頂きの眺め Copyright HAL 2012-11-16 18:58:02
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