秋の便り
月乃助


長らくご無沙汰しております


 要に結ばれた 松の葉が
 はらはらと舞っていたりするものですから

この世で添い遂げられなかった二人の 死骸の群れのように思え
いたたまれずに 出かける気になったようです

 宿世の縁などと

 人であることを忘れたいときはきまって

やってくるそこは、田んぼの畦の交差する田舎道

場違いの 電話ボックスがぽつねんと 立っています

 収穫を終えた田には、
 刈り入れの跡が整然と 冬を待つ列を成し

ただ一方は、休耕地のコスモスの花畑
陽の光をむさぼっていたりします

 私もまた 電話ボックスによりかかり

 見渡す秋空に 質量などもたぬ光の

あたたかさを孕む力に 驚かされたり

風が雲を運ぶのは、なにかの意志にちがいないと 想ったり、


 ときおり電話が鳴るのは、
 私を必要ともとめる 呼び鈴のようなものですが
今日ばかりは、すこし ほっておくことにいたします




                                
かしこ








自由詩 秋の便り Copyright 月乃助 2012-11-15 21:04:09
notebook Home