大きなもみじ
木の若芽
「大きなもみじ」
木の若芽
いろんな木の葉が散り交じる
大きい葉 小さい葉 ぎざぎざの まるいの
一面にふりまかれた気取りない木の衣装の端切れ
*
山の晴れた光はいっぱいに
陽の光と木の光と川の光
空から光り 谷から光り 森から光る
朝の山に分け入り
朝の森を歩く
ふと不思議な感覚
まったく音がない
いやすべての音を吸いこんでしまう
光のめったにささない深い濃い杉の森に迷う
手と頬が冷たくなる
心地よい不気味さ
ああ灰白色の木の肌して
眼下の崖から眼上の空へそびえる寡黙な巨木
まわりの木々は紅に茶に黄に
葉の雨を落とし
音楽のように
巨木はじっとそれを聴いている
そして水を根元からしたたらす
木の涙
*
もみじする山
しずかに祝う
土を水を光を
木がある地
葉がある木
そこに川が流れる
祝う理由はそれで十分
おお 今もみじしろよ
山
この年の空気の具合に合わせて
いろどりをととのえて