風が来るところ
木の若芽

「風が来るところ」
           木の若芽


雲ひとつない空に
しばらくしてひとつだけ見つけた雲は
空に浮かんだ理想郷の島に見えた
ああ でも今日はここが理想郷だ
あの雲まで行かなくても
この木々茂るしずかな風致区が

秋の陽の光を吸い込んだ池の水面は
ゆっくりと泳ぐ魚に揺れて
映る木々がそれに揺れ
見つめるわたしの心がそれに揺れ
ゆらゆらと自然をつつむ

植物が光の方へ伸び 水の方へ伸びるように
わたしは目をつぶっても街ではなく自然の方へ歩める
木が差し招く方へ

遠くから渡ってきた鳥たちを迎えて
一段とにぎやかになった秋の林
こつこつ 見えないところできつつきもたたいている

ハイネケンの黒ビールで
わたしはなぜか茶色く小さいつぐみになったよう
それとも まだ 人なのかな



自由詩 風が来るところ Copyright 木の若芽 2012-11-15 15:59:34
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