未来の語り部
木の若芽

「未来の語り部」
           木の若芽

小さな草たちがかすかな声で歌い始めた
わたしも声に出すことを見つけよう
歌うこと語ることを 掘り起こし練り上げよう

肌を光で包んで風にさらし
足を空と結んで雲を歩み
この喜びを一人じめしたくない
押しつけたくもない
分かち合いたい
語り部の心技を会得するすべはどこに

今はたちまち過去になる
今は過去になりゆくもの
今はすみやかに未来になる
今は未来が入ってくるところ
未来のわたしは変わっていく
未来に起こることは創ることができる
今書く詩を未来に書く詩の糧にする

空には月がかかっている
屋根をつき抜けてさしている
木の上と同じようにわたしの上に
詩も時間も愛も
月と月の向こうからやって来る

びりびりと凍てた空気が風になり
人に向かって吹く
体は寒さに負けまいと
肺も心臓も肌も鼻も骨も
全力で働きを強める
火になれ 髪
火の玉になれ 眼
火の川になれ 血
凍てた空気をあたためて走ろう
赤い花にさわれ
ほのかなぬくもりを互いに増そう
凍てた空気が風になる時
人に火がつく
語り部の心技はそこに




自由詩 未来の語り部 Copyright 木の若芽 2012-11-15 15:46:47
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