刻詩病
高原漣

かかなくては、死んでしまいます。

うたわなくては、死んでしまうのです。

髪も、膚もまっ白い、ゆう霊のやうな少女は、さう云ひました。

あかい硯を右手に、まっ黒い蝶々てふてふの翅に筆をはしらせます。

すると、蝶々てふてふはたった今、いのちを得たかのやうに

にび色のそらへ、とび発ってゆくのです。

まっ白な少女は、今日も甘やかな詩をかなでます……


自由詩 刻詩病 Copyright 高原漣 2012-11-14 22:52:14
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