駱駝
綾野蒼希

屋根裏で昼寝のにおいをかぎながら、
目をつむってうとうとしていると、
光のカーテンの向こうから駱駝が現れた。

駱駝はまるで地図のしわを引き伸ばしたような顔で、
長い間ヨーロッパ諸国を遍歴してきてわかったことがあるという。

それは、想像力を養うためには、
日々想像の蜜蝋で磨かなければならない
ということ。

実は名詞も形容詞も動詞もそれほど重要ではないらしい。

ぼくが、ではいちばん何が重要なのかと聞くと、
とたんに駱駝の鼻息が荒くなった。

そして駱駝はひとこと、
そろそろ砂丘に戻らねば……
とだけつぶやいて、帰っていった。


自由詩 駱駝 Copyright 綾野蒼希 2012-11-14 15:24:46
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