『逆流』
あおい満月

この部屋中にある
あらゆるものを突き刺して
壊れたオブジェをつくる
グラスも、時計も、棚も、オルゴールも、
本もめちゃめちゃに破いて、
逆流という名のオブジェをつくる

あたしの時間は
遠い夏に逆流したまま止まっている
目閉じているが
軋む左腕のなかのボルトと
抜け落ちた歯が
星座のように証明している
あたしのなかの欠陥



壊れた硝子の破片が
あたしの指を刺した
みるみるあふれる赤い花で
赤く色をつける
何色にもまじわらない血が
虚しさの余韻となって風に凪ぐ

**
風の少し冷たい
秋空の下で
壊れたオブジェに
ライターで火をつける
燃え上がる壊れた時間が
宙を舞っていく
けれど、
逆流した過去は消えない

あたしは燃えた灰を抱いて
歩いていくのだ
硝子で傷をつけた
指の痛みを堪えながら



二〇一二年十月二六日(金)


自由詩 『逆流』 Copyright あおい満月 2012-11-11 15:14:54
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