赤い靴のロンド
愛心

昔々と記しておけば
赦されるのだと気づいたの



赤い靴のロンド



パパ ママ 行ってくるわね
眠りに落ちた 部屋に囁いて
闇に溶け込む 家から抜け出したの

良い子ね なんて言わないで
夜空だけで良いの あたしを見てるのは

何もかもが眠る今に あたしは生きる
赤い靴で 跳ねて躍るわ

昔々あるところに 赤い靴を履いた少女が

ゆらぐ たゆたう あたしの歌と
ネジの外れた ステップ ワン・ツー
ララ ル ラ あたしの歌は
生き辛いこの世を嗤うの

真っ赤な靴よ 教えて ワン・ツー
干からびた地面を 蹴りつける
あたしの肌を 裂いて きらきら
滴る雫の赤が 好きなの

夜の公園 ひとりの男
シャッター音と 目障りな影
人は嫌いよ 男はもっとね

わざとらしく 歌ってみせるの

彼のレンズが あたしを覗いて
あたしの足元を見つめて笑う

知らないの その筈だったのに
彼はあたしの手を取った

昔々あるところに 赤い靴を履いた少女と

ふれる はなれる あたしじゃない熱
いつもと違う 夜なんて どうして
初めてなの こんな感情

真っ赤な靴よ 教えて ワン・ツー
夜に映える 赤い靴
あたしの目に写る 彼の夜色
幸せそうな眼 何故なの

赤い靴 掠れきって
あたしの息を 繋ぐ 生を
踊れなくなったら 死んでしまうと
おまじないのように 呟いてた

昔々あるところに赤い靴を履いた少女は

顔も忘れたクラスメイトと
ゆら ラ ラルラ 息をするの
引き裂いた制服と あたしの心
茶色くなった傷も 冷たい熱も

初めて 人と生きた気がする
夜は好きなの 溶け合っていくから

さようなら またね
月の眼をした彼は あたしの足に口づけた


自由詩 赤い靴のロンド Copyright 愛心 2012-11-11 00:09:26
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