【 カマキリの災難 】
泡沫恋歌
昼下がりの公園
子どもたちが四、五人集まって
わいわいやっている
何だろうかと覗きこんだら
身体が一番でかい男の子が
カマキリを手に持っている
青い立派なカマキリだ
「今から、このカマキリ空を飛ぶでぇー」
大きくかぶり振って
男の子は空高くカマキリを放り投げた
放物線状にクルクル回転しながら
フェンス越しの駐車場へ
落下していくカマキリ
そして見事な着地だ
「ウルトラC!」
何もなかったように
駐車場のアスファルトの上を
ヨチヨチと歩き出した
あんな目に合わされたのに
カマキリは平然としている
昆虫って感情とかなさそうだ
だけどカマキリの仲間に会ったら
「おれなあ、今日、大空飛んだんやでぇ」
「マジか? 俺らの仲間ではお前が初めてや」
「そや、凄いやろ」
カマを構えて自慢しているに違いない
*
華麗に飛べない昆虫カマキリが
初めて蝶々やとんぼのように空を舞った
これは進化の記録として録って置くべき事実だ
たぶん 今日からカマキリは
空を飛ぶための進化のスイッチが入った筈だから
3百万年後の地球の大空を
カマキリが優雅に舞っていることだろう
その頃 カラスは飛べなくなって
鶏みたいに地べたを這っている
そして 王蟲(オーム)のように
巨大化したダンゴ虫に踏み潰されるのだ
ざまあみろ!
無邪気な午後のひと時と
アホな妄想でした――
2012/011/09
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愚詩 = 愚痴