秋の飛翔
灰泥軽茶

見上げると木の葉はもう染まっている

風もずいぶんと冷たい

そうして

風で葉が落ちているのを

何も考えずに眺めていると

いつのまにか私が大切にしてきたことも

こうして自然に落ちていっているのではないかと

不安になる

忘れることはいいことかもしれないが

だからと言って新鮮な気持ちもあまりしないのは

なぜだろうと

そっと一枚落ち葉を拾い身体につけると

忘れていた感覚の端っこがむず痒い

一枚一枚ひょいひょいと身体につけていくと

あぁこの感覚がよみがえる

吸い込む空気が吐き出す空気が弾けて消える

そうだと落ち葉が埋まる土の上に

ごろごろ寝転がり身体中に落ち葉を纏うと

私はもう全身力がみなぎり

全力疾走で走り出し

橋の上から飛び降り

風と共に空高く舞い上がり

私たちは散り散り方々

いろとりどり飛ばされていき

漠然とした意識の中で

満ち足りた気分で消えていく












自由詩 秋の飛翔 Copyright 灰泥軽茶 2012-11-09 02:24:01
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