苦しみ捨て山
すみたに




苦しいですか、
そうですか、
それならそう、捨てに行きましょう
山奥に
ほとんど一目に付かないところに
捨てていきましょう

  いいえ、止しときます
  わたしの苦しみは
  捨てていけるものではない
  それに苦しみは
  見たがられているから
  山が荒らされる
  森が踏みにじられる

なぜですか、
苦しいのですよね、
それならそう、捨てに行きましょう、
山奥に
たくさんの産廃にまぎれさせ
捨てて行きましょう

  いいえ、止しときます
  わたしの苦しみは
  捨てていけるものではない
  それに苦しみは
  わたしの生の産物でない
  生が受けるものは
  生が授かったもの

いいかげん、
苦しみからはなたれて、
強情張らずに、捨てに行きましょう、
山奥に
たくさんの先祖の骨とともに
埋めて捨てていきましょう

  いいえ、止しときます
  わたしの苦しみは
  埋められるものではない
  それに苦しみは
  時代の底にはない
  これの苦しみはわたしで

ならば捨てるも権利です

  いいえ、
  捨てる権利などない
  それは譲り渡すことにすぎない、
  わたしは思うのだ、
  だから
  苦しみを大地に埋めるなと
  苦しみを先祖にだかせるなと。



自由詩 苦しみ捨て山 Copyright すみたに 2012-11-08 21:28:58
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