地球を釣る
いつも神様の国へ行かうとしながら地獄の門を潜つてしまふ人間

朝六時。さっきまで雨がふっていたのに。
すべらかに陽がとけて。車をはしらせる。
海岸。
ごつごつした岩の突端まで、青いダニみたいに跳ねて。
釣り糸をなげる。

(塔の物見にたっていると
虹が立体映写されてるばしょに
どうしてか人が集まっているのが見えた)

どうすれば、なにも考えないようになれるか 。
考えていた。たとえば、地球でいちばん醜い文章のこととか。そんな文章も、こんな海から産まれたのだろうか。
なにも分からないような僕を。
音痴の人魚がすこし嗤う。

(射手の弓矢が放たれて
どこまでも、どこまでも
遠くへ)

釣れますか。釣れません。
時間は煙草の煙になるだけだし。
腹式呼吸も波とシンクロしない。
へいたんな岩に寝っころがると、ロッドが空につき立った。
水平線を透かし見る。
ワイヤーの希望する角度で。
地球を釣る。
餌はエビだ。






自由詩 地球を釣る Copyright いつも神様の国へ行かうとしながら地獄の門を潜つてしまふ人間 2012-11-08 19:11:16
notebook Home