【 擬態 — mimicry — 】
泡沫恋歌

玄関の前で鍵を開けようと
ポケットを探っていたら
いきなり足元の落ち葉が舞い上がった
予測していなかったので 
わたしはすごく驚いた!

よく見ると
それは一羽の蛾だった
木の葉によく似た蛾
飛んだから蛾であると分かったものの
あの蛾が木に止まっていたら
見抜けなかっただろう
枯れ草の中に紛れていたら
絶対に分からない
それは見事な擬態であった

 ― mimicry ―

『擬態』という不思議なの生態
進化の過程で生まれた能力だろうが
なぜあれほどまでに
違うものに成りすまそうとするのか
それが生きる術だったんだろうか

人はどうだろう?
やはり擬態するのだ
集団の中にあって
目立たないように
人の意見に合わせて自己主張しないように
「仲間」という人の群れの中に擬態している
そうすることによって
他者からの攻撃をかわす
それを『隠蔽的擬態』という

また ある時は
仲間の振りをして
虎視眈眈とチャンスを窺っている
誰かがつまずこうものなら
いきなり毒牙を剥きだし攻撃をする
徹底的に相手を叩きのめし
そのポジションを奪おうとする
政治家たちの権力争いがそうだ
浅ましき生き物の性
それを『攻撃擬態』という

 ― mimicry ―

この不思議なの生態について
一羽の蛾を通じて考えてみた
擬態はしょせん卑怯な技のように思う
きっと 私も弱い自分を隠すために
いろんな擬態を繰り返しているのであろう

もはや 隠れることが
一番の自己主張だったりする



                           2012/011/07


自由詩 【 擬態 — mimicry — 】 Copyright 泡沫恋歌 2012-11-07 12:17:42
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