光る陰
るるりら

さしだされた 日差しに
両手を広げ 
思い出を 手放す

記憶にない私の産着
世紀を飛び越えて 目の前にある紋付袴
晒された金襴の帯 鯨尺の和裁版 
沈没しても浮上する船箪笥 古銭
死んだ人の遺影に 晒された
嘗て私の一部だった へその緒

 
いまはだれも住んではいない家の閉め切った部屋の
ひかり と かげ
なんの音もない 締め切った部屋のガランドウ
幽霊船の船底の宝のような 豪奢な揺らぎ

 
窓を開け
日差しに差し出す

あたりは まじっけのない金木犀の風
木陰は まるで 
光を発する影のよう

先にいった あの人が
童のように 笑ってる


自由詩 光る陰 Copyright るるりら 2012-11-07 09:16:55
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