光る陰
るるりら
さしだされた 日差しに 
両手を広げ  
思い出を 手放す 
記憶にない私の産着 
世紀を飛び越えて 目の前にある紋付袴 
晒された金襴の帯 鯨尺の和裁版  
沈没しても浮上する船箪笥 古銭 
死んだ人の遺影に 晒された 
嘗て私の一部だった へその緒 
  
いまはだれも住んではいない家の閉め切った部屋の 
ひかり と かげ 
なんの音もない 締め切った部屋のガランドウ 
幽霊船の船底の宝のような 豪奢な揺らぎ 
  
窓を開け 
日差しに差し出す 
と 
あたりは まじっけのない金木犀の風 
木陰は まるで  
光を発する影のよう 
先にいった あの人が 
童のように 笑ってる 
 
