『赤い督促状』
あおい満月
わたしの家のポストには
いつも一枚の封筒が入っている
その中身は、
黒い活字体で
「あなたの血を提出してください」
と書いてある
日にちが迫っているらしく
赤い下線が引かれている
わたしの血潮は
砂糖にまみれて
甘くねっとりとしているから
献血所にはいけない
ならば、
経血を絞り集めて
袋詰めにして送ろうか
経血は濁流になって
わたしの下から流れ出る
ぐっしょりと濡れたナプキンは
チーズのような異臭を放つ
わたしも同じような黒い活字体で
「ご担当者様
これで如何でしょうか。
わたしにはお金はありません」と打って
宅急便で送りつけた
非課税のわたしには
税制課の赤い封筒が重い
「親展」の白い文字が
わたしの息をしめつける
非正規のわたしには、
血を流すにも力がいる
凶器を手に入れる
力がいるのだ
二〇一二年七月