万霊節の夜
月乃助

 
お気をつけなさい
今宵ばかりは、
死人たちの 郷愁が森に充ちる

丸々と太った 月 明かりが、短い影を落とした 

物の怪も 死人たちも往来を徘徊する夜
始まりは、痩せた いまだに
夏の微熱にうかれる黒猫の わらいごえ


季節のはざまは、ケルトの言い伝えだ、そうな
Trick Or Treat
オレンジ色のカボチャに 灯をともす
子供たちの 道標るべ
訪ねる家を 失わないように


化身はいつも
絶対安全の 夜の完了形
その姿なら 死霊たちも手はださぬ


秋の実りの饗宴に、いつしか
赤ら顔の鬼たちも あらわれた
ほろ酔いの チョコレ‐トを肴に
奇声をあげる


子供たちの宴のあと 私は、
91枚の大皿を洗う
ここには、こんなにも 子供たちがいるのです


仕事を終えれば
長い間眠っていた
古びた 箒にまたがり
月を越える


魔女の私も
今宵ばかりは、ほんのすこし
家路をいそいだり するのです





















自由詩 万霊節の夜 Copyright 月乃助 2012-11-06 14:51:14
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