夜めぐる夜
木立 悟
背の羽の刺青
岸壁の火
光と冬 足もとに
砕けゆく音
蝋の曇が
水面を覆う
地の足跡は空へつづき
雨と雪に満ちてゆく
暗がり 水たまり 分かれ道
黒に燃えて 樹は揺れ動く
曲がり角を
たなびかせる風
水を聴き 色を視る
常に常に 流れる音
点と糸 どこまでも
点と糸
水底には水底の手
遠い青を瞬時に受け取り
わずかに明るい街のふちの
音の無さだけをなぞりゆく
葉と葉にまたたく
失われた数字を集めれば
地図は手からあふれ出て
橋をひたす影になる
誰もいない通りで
虹の馬が回りつづける
三本足の雨が
置き去りの影を踏みしめ
次の街へ
次の次の季節を撒いてゆく