悪魔の悪書
るるりら

アクマで悪書を好んで読むわ
雨が降るみたいに 身体が溶けて流れ出しそうよ
中央線新宿駅の立川方面行きプラットホームの
真ん中の柱に寄りかかって死んだ目をしていても
悪魔なんかじゃないわ こんなの
水銀みたいに重い銀色の身体が ヘビィだなんて私らしくないわ

あいたい人は いるのよ
あいにく天使みたいなラブストーリィに はまっているの
頭の中は いつも アニメ声よ
あの人のガランドウの心が熟して食べごろになるのを待っているの
それまでは天使みたいな悪書を勉強しかしないの


十一月の最初の日の十二時には
生者の世界と死者の世界との間に目に見えない「門」が開き
異界との境界から電車が発着するわ
その境界をつなぐ電車が悪魔界の悪書には本当のことしか書いてなくて
その電車のことも 書かれているのよ

その本にはね【龍の尻尾は蛇】
って書いてあるの
電車の性質は豪奢だけど、でもその電車自体は蛇の尻尾みたいに
かぼそく目立たない でも尻尾をみつけて掴んで
その電車に乗車できれば
思い通りの未来へ行くことが約束されるわ

悪魔ならみんな知っていることなんで
人間はあまり知らないみたい 
だから この世界って人間には不都合なことばかりおこるのよ
発着は新宿零時なのにね

中央線みたいに突っ切って渡るにしろ
丸の内線みたいに永遠に回ることを目指すにしろ
幸せの尻尾をつかむのも
乗車にはタイミングが勝負よね
こうしちゃおれないわ
あの人のガランドウが 素敵に熟れるように
スリットの深いドレスを着て

電車に乗るわ
わたしね 人間になりたいの





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参考資料。ハロウィンの原型は、サウィン祭といわれている。サウィン祭はケルト人の収穫感謝祭です。ケルト人の1年の終りは、この祭りの行われる10月31日でした。この日は、夏の終りの日であり、長く厳しい冬の始まる日でもありました。この祭りの夜は、同時に死者の祭りでもありました。年末から年始にかけてのこの時期は、生者の世界と死者の世界との間に目に見えない「門」が開き、異界との境界があいまいになると信じられていたそうです。この日は、死者の霊が親族のもとに訪れることを祝う日でもありました。しかし、同時に悪霊や妖精、精霊が訪れ、家畜や農作物に被害を与えるとされました。



自由詩 悪魔の悪書 Copyright るるりら 2012-11-01 19:28:07
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