法則
salco

みな年を取って行く
かわいい女を妊娠させ
若い女をエスコートしても
みな年を取って行く
無邪気な芸術家を気取っていても
また年を取って行く
二十五でやっと大人の仲間入りをし
三十で自分がもはや若者ではないと
ようやく気づくようでも
誰ひとり遅れて老いてはいないのだ
ふやけた皮膚で顔が丸みを帯びようと
頬骨の下がげっそり陥没して来ようと
すがしい横顔が絵になる面影は
子供じみた中年男のどこにも無い

君のポートレイトを一枚だけ残した昔の恋人も
君の今に驚くには同じように
鏡の中で変わり果ててしまっているだろう
巡り来る季節の中で思い出と等しく
若く美しいのは今、息子や娘であり
決して老いなどしないかのように
盛りの季節に何と眩しいことだろう
常に常にそうであり
そうであったように
世界は螺旋を描いて回っている
同心でありながら幾重もの円周を成し
明るく輝く中心部から
人は徐々に乖離して行く
みな年を取って行く
五年前三十であったのに
いつの間にか五十を過ぎている


自由詩 法則 Copyright salco 2012-10-29 23:14:21
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