accoucher
とりかご

アクウシェ、アクウシェ
そらをよぶ鳥の
悲鳴、だけが
つぎつぎと巣立ち、
のこされた
しろい尾羽根は
ながされた血に倣って
たかい、たかい、
高層ビルの屋上から
飛び降りてゆくのでしょう


日記帳、
黒塗りの頁、
だけを燃やし
落下。
空白の日々は
慎ましやかな黙祷、

あるいは
放逐した痣を
しのばせる脈拍の


アクウシェ、
咬傷、
連なっていく
かさねられた朝
と朝の隙間に
あざやかな鶺鴒を
隠しておくから


アクウシェ、
眠るために目覚め
目覚めるたびに眠る
夢をみることのない
始祖の蛇の白鱗
から剥がれ落ちた
脈拍を宿して


アクウシェ、
日記、の次頁が
筆圧の強い文字で
埋まるのだとしたら
そしてふたたび
罪のない動物たちと
交合するのだとしたら
アクウシェ、アクウシェ、
のこされた
しろい尾羽根は
ながされた血に倣って
たかい、たかい、
高層ビルの屋上から
飛び降りてゆくのでしょう
そうして、アクウシェ、
なにひとつ
なにひとつ厭わない声音で
、アクウシェ、
明日、また
そらを呼ぶから、


 


自由詩 accoucher Copyright とりかご 2012-10-27 09:44:23
notebook Home