事件とウイスキー
ことこ

毎日がつまんないと絶望しなきゃなんないからちょっぴりの
事件とウイスキーが必要。つまりはミステリー小説的なうる
おい。地元ではそこそこ名の知れたしがない一族経営の会社
でルーティン・ワークをなにげなくこなす事務員というのは
仮の姿でひとたび子猫がひっかき傷をつくればあれよあれよ
という間にほんとうのわたくしが顔をあらわしてしまうの。
あたしはまだほんとうのわたくしを見たことなんてないんだ
けどこれってつまり二重人格の様相。スキャンダラスな細胞
分裂がトリコロール風に喝采。今度の日曜日に山崎へ行こう
よって彼氏のお誘いの電話を受けたのはノー・残業デーの残
業真っ最中で記憶をぱちんと飛ばす特技を身につけてるあた
しは一瞬で日曜日にワープワープワープ。って念じながらテ
イクアウトの牛丼をかきこむ。だれかあたしにレベル4の評
価をくれたっていいのよ。さもなきゃペンタゴンの落成式へ
行こうよ。そもそもあたしと彼氏が出会ったのは第六感によ
るものであってそれ以上でもそれ以下でもないのだけれど何
もかもが七並べみたいに順序よくってわけにはいかない。オ
クターブ上の軌道へはじかれてこの書類の山がなくなること
こそ事件ねって世紀の大発見。ナノメートル単位の嘘。もう
こうなったら何もかも蒸留しちゃえばいいもんねって知った
かぶりしてみる。ほんとうのわたくしだってまだあらわれそ
うにないしテンカウントしてる間にはやく迎えに来てよね。


自由詩 事件とウイスキー Copyright ことこ 2012-10-25 21:29:47
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