金太郎
salco

マサカリ担いだ金太郎
今日はどこまで行って来た
どんなオイタをして来たの
熊を何頭ぶん投げて
何頭負かして泣かせて来たの 
お前の腹がけひんむいて
お尻をぺんぺんしてやろう
まるまる太いあんよの間に飛び出した
余計な器官をつまんで引っぱって
ねじりんぼにして
貝印のカミソリで
ちょん切ってしまおうね

お前のおかげで正義がみんな
独善の力ずくになってしまったよ
見てごらん、
桃太郎が鉢巻しめて息巻いている
赤ん坊の尻よりやわな桃生まれ
川流れの捨て子のくせに、鬼退治だと
パレスチナを荒らし回った十字軍そっくりだ
見てごらん、
亀を助けた浦島の田吾作までもが
謝恩に乗じ欲かいて玉手箱を持ち帰る
耕しもせず漁りもせず
昼間から釣ざお持ってふらふらと
道理で省庁の外郭団体とODA
NGOがアフリカに殺到するわけだ
ゆくゆくホウキとチリトリ持って乗り込む
日系企業が潤うという仕組みだからね

マサカリ担いだ金太郎
端午の節句に鐘旭の横にしゃしゃり出た
お前のかむろをバリカンで刈り
太い眉毛をこの指で全部毟ってやるから
覚えてお置き
お前みたいな乱暴者は要らないよ
深い穴に戻してやろう
毛深いほどに欲深くなる前
白粉はたいて紅塗って廓の陰間にしてやろう
毎晩客を取るがいい
尻を腫らして泣くがいい
機銃担いだ金太郎
黄色い吊り目の金太郎
ガムを噛み噛み金太郎
コーラン掲げて金太郎
真っ黒けっけの金太郎

吹聴される正義なぞこの時代
誰も鵜呑みにしやしない
お前を潰してやるなんて
鶏の頸をひねるよりた易いことだ
どこかの寡婦があばずれが
兄を亡くした妹が、弟を亡くした姉が
子を殺された母親がお前を恨む時
投げられた熊、殺された鬼どもの
地づらに流れた血が呪詛となり
お前の瞼に居を移す
夜ある限りお前の枕は高くない
マサカリ担いだ金太郎
月ある限りお前の枕は二度と高くない
愚かに女が孕む限り
お前を産み出す限り
墓前の香華は絶えないのだから

今日はどこまでどんな余計なお節介
昼間は付け焼刃を揮って跳び歩き
眠れぬ夜に故郷へ文を書く
明日は撃鉄起こして引鉄を引き
見知らぬ誰かから今生を奪うその指で
しかし奪われるのはお前自身かも知れないのだね
金太郎
マサカリ担いで殺るか殺られるか
スリリングな毎日だこと
それが私らを守る為だと言う
その常套句
そのレトリック
お前の攻撃が母国の安寧を脅かす素因にならないと?
力学はピンボールマシーンだよ
盧溝橋を爆破したら八年後にB‐29が飛来する
自国民を空襲で殺し
原爆のモルモットにしたのがお前だよ
後の世から見ればいつも
どんな侵略にも戦闘にも
さしたる意義が見出せないにも関わらず

だからなおさら生殖器官はもう要らない
排尿さえ明日は要らないだろう
よしんば生きて
見知らぬ誰かの子孫の百年を奪った身に
繁殖の権利があるとでも?
前線でオッ立ち掃討の傍ら女子供を犯して回る
お前の衝動は誰にとっても有害なだけだ
だからちょん切ってしまうよ金太郎
お前の子孫も
お前みたいな人間も要らない
お前の作られた存在理由はとっても無益で
寧ろとってもとっても有害だから
暗く冷たい土中のしかばね同様に
生きてて最初に腐るのが臓物と
その浅薄な目ん玉であるほど愚かしい
金太郎
帰る家があると思ったら大まちがいだよ
マサカリ担いだ金太郎


自由詩 金太郎 Copyright salco 2012-10-22 23:15:03
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