シャネルno.68
月乃助

気まぐれな秋の風に
そそのかされた 紅の葉が
舞ってみせる


 こんな日は、人恋しくて
街へでる
舗装された道は あそこもここも
わずかに 傾いで見えて
私は、足の爪をとがらせないと
上手に 歩くことができない



 山深い路は、
誰かのおいた 小石の重なりが
人が路に迷わないように 行き先をおしえてくれる
街には、そんなかんたんな
ヤサシサもないのですね



 忘れてしまいたいことを
大事にしたいことなら なおさら
石のしたに 隠すようにおいていく
歩んだ路を もどってくるときに
それを 思い出したり
懐かしむため



 人とつながらないように
私の携帯は、水の中
早瀬の岩のしたで 眠っている
青白い光を 蛍のように
灯しながら



    ( でも今宵は、)



 あやうくて、
妖しくて
作り物の宝石のような夜に
酔いたくなる


 賑やかな男が 欲しくなって
約束のある女の顔で
使い古しの 紅をひく


 守れるものは ほんの少しだけ、
手の中に残った 
その重さを確かめてみたくなる
幸せなんだと 
私の肩に言の葉の小石を重ねる
君に会いたくて 


 知らない
街に立つ 夜







自由詩 シャネルno.68 Copyright 月乃助 2012-10-22 11:37:59
notebook Home 戻る