封をとく
かんな




金木犀のかおりが郵便受けから流れると鍵をしめた
私は外に出ていたときに
人生で最初の婚姻届の切れ端を届けた
しあわせに封をして焼印を押し君に告げたいことばが溢れた
買ったばかりのダイニングテーブルの
四脚ある椅子のうちの最後に腰掛けると知らずに泣いていた
何度も何度も開けようとした鍵は開かずの扉となって
未来も過去も封じようとしている
そんなことはさせない。だから便箋を手にしたのだ
くらい話をしたい訳ではない。あかるい
灯がみえる未来の話をしたいのだ
文章を書くには良い日と良くない日があることを知っている
今日がよくない日だということも知っているが
私ほどしあわせな人はいない
こうして君にことばを綴ることができるのだから。





自由詩 封をとく Copyright かんな 2012-10-19 15:15:07
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