ひとつ 千年
木立 悟






ひとつの泡
ひとつの滴
止むことのない曲線に降る
すべての冬


宙を羽織り
気を被り
星の履きもの
季節の嘘

森を作る鳥
岩へ至る岩の径
鉱の曇 鉱の内臓
落ちては響く 
逆さまへの衝動

青の灰が路地を遠のき
息を吐き 息を吐き
門の外側の空を視るとき
伝えぬものまで伝わってゆく


くちばしを器へ
緑を撒いて
灯は水を去る
千年が経つ


ほどけた星座をふたたび結び
火 海 魚へ落ちてゆく
けだもののうた
頭蓋のなかの
もうひとつの耳

夢の夢に忘れたむらさき
水に触れては増えてゆき
冠なのか足枷なのか
虹は鳥の森を揺らす


川が動き
湖はちぎれ
けだもののうた
よどみにねむり
月を獲るか獲らぬかのうた
子らの指から生まれ来る



























自由詩 ひとつ 千年 Copyright 木立 悟 2012-10-19 10:59:18
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