廻り廻ってさようなら/月と蜘蛛
ただのみきや

廻り廻ってさようなら
季節はまたも去って行く
やがてはわたしも去って逝く

寒くなったね

それでも今夜はまだ
震えながらも網をかけて

待っていましたよ
今夜はまたすらりとして
冴え冴えとして
うっとり見とれてしまいます

一度でいいから
あなたを捕まえてみたかった
夜ごとに網を張り続けたけれど

気がつけばカンタンの歌声も消え失せて
枯野原を北風のやつが物悲しく揺さぶっていて

二日前の良く晴れた夜明け前
秋が真顔で下りてきて
白く冷たい吐息をね

こう寒くなるとかなわないな

ああ 今夜はどうかこの網に
寄ってはもらえませんか
まっさらな網が夜露を孕んで綺麗です
きっと気に入ってもらえるはず

もうじき雪の布団が敷かれて
みんな眠ってしまうから
夢の中で目覚めても
もどるからだは絶果てたまま

たぶん今夜が最後
こうしてあなたと話すのも

あなたは空を一巡り
わたしは

廻り廻って
さようなら


自由詩 廻り廻ってさようなら/月と蜘蛛 Copyright ただのみきや 2012-10-19 00:53:41
notebook Home