キイー!
あおば
121018
カ行に溺れて真っ逆さまに転落し至った果てが奈落の底
現在の表現だと地獄の底と言うことになりますかねと
来るべき総選挙のことを少しだけ考えながら話し出す男
恐らく、地獄の釜の蓋が開くという表現を想起したのではないかと邪推する
だとすると7月のお盆は過ぎ、これから冬に向かうのだから、次は正月だね
旧暦だか新暦だか知らないがと言いたくなる台詞は呑み込み
カ行変格活用の説明を始める
中学生だって知っていることなのだけれども
丁寧な例文を掲げ立て板に水の滑舌の清らかさ
この方はなにを家業になさっていらっしゃったのかなと思わず聞き耳を立てると
やおら
キーと鋭い音を立てて新聞配達の青年が自転車の後輪を軋ませて停車する
この辺りではエンジン付きのバイク配達ではないようで
無骨な黒い自転車が元気良く往来しているところを見ると
この辺りはまだ平成の御代ではないようで
道理で道行く人の顔に自信が漲っている
おい! そこ行く青年 などとくだんの弁士も平気で声を掛けるので
私のことかなと顔を向けたが視線の先はもう少し遠いようだった
とすると私の時代でなくて20年くらい前かな
クーと腹が鳴って我に返る
焦げ付いた鍋の底には寝惚けた色のうらなりカボチャが美味そうに薫る
これからが私の時代ですよと言いたそうに薫り
中身の黄色も一段と冴えて光る
駄洒落ですねと声を掛けた