朝の葡萄
石瀬琳々

君の、夜明けの口唇に
葡萄の粒を含ませる朝
旅立つための翼をいだく
わたしの翼は白いだろうか
それとも燃えて血がにじんで赤く


葡萄の房に朝の雫がこぼれ
風が喜びを歌うとき


ひるがえる鳥の翼よ
光は射して夢の続きを結ぶ
あるいは鳴く鳥の声の限りに
胸に響いている ただ一途


あの葉陰に
あのやさしく戯れた指さき


葡萄は熟して光を帯びた
わたしの愛もあなたを思って満ちる
赤く、それはわたしを流れる血のように
すべて飲み干して
つきることのない泉


遠くどこまでも行こう
たとえまだ言葉がかたちにならないとしても


静かにそっとその目を閉じて――


君の、風に乾いた口唇に
葡萄の粒を含ませて
一度だけの夢をみる朝
口移しで知る永遠のありか
翼は力強く、しなやかに飛ぶ




自由詩 朝の葡萄 Copyright 石瀬琳々 2012-10-18 13:51:43
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