やくそく
yo-yo

虫たちにさよならをしたら
空気がだいぶ薄くなったみたいで
空が遠くなってしまったよ
いつか約束したね
まわりがすっかり静かになったら
聞こえてくるだろうか
その小さな声が


ことばではなく
指の隙間からこぼれ落ちる
そんなやさしさで
ひろい集めてみたいけど
いまは痩せた背骨にも届かないんだ


レコードの古いキズに
立ちどまったり躓いたり
ドボルザークではなく
ボロディン
麦わらみたいな乾いた空気を吸って
吐きだすときはみんな
湿ったフルートだったね


あれが約束だったのだろうか
だがひとつになることはなかった
ことばではないから今は
確かめることもできないけれど


ことばの約束を
つい記憶のなかに探してしまうよ
ひとつだけ点滅する光
暗い川のむこうで
サインを送ってくれるひとがいた
光はことばだった
魂だった
確かなことはそれだけだった


枯葉の道のドボルザーク
夕焼けのボロディン
背中の風がどんどん冷えていくよ
光に魂があるならば
瞬きする星にもことばがあるかもしれない
小さな声を聞くこと
その声をことばにすること
約束されたことばを見つけること
いまはもう
虫たちもいないけれど







自由詩 やくそく Copyright yo-yo 2012-10-18 07:35:19
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