無言
三田九郎
人間どもの
情念の切れ端が
いちいちこの世に刻まれてしまったなら
この地球も
いつしか宇宙の隅々までも
僕の狭い部屋や
遠いどこかの山村までも
情念で切り刻まれてしまう
言葉というものが
いちいち説明とか
心情の吐露とかいったものに使われてしまったなら
ありふれた定型で
世界中が埋め尽くされてしまう
語る言葉
語るべきもののない人と
どこまでも無言で
愛し合っていたい
自由詩
無言
Copyright
三田九郎
2012-10-17 02:58:52
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