夢の続き
殿岡秀秋

夢で大人にお辞儀する子ども
互いに正座している
どこの子だろうか
黙ったままうつむいている
何のために向きあっているかもわからない
目覚めが近づいて
シルエットがゆれだす

夢の白い網に
昔観た時代劇映画で
武将にお辞儀する子どもが浮かびあがる
楠木正成の子別れの場だ
やがてその子正行(まさつら)が若武者になる
父と同じように負けるとわかっている
合戦に出て
兜がとれて
髪振り乱して闘う

夢の網が
記憶の海から
難波船の船首像を引っ掛けるように
釣り上げた

緋縅の鎧の若武者は
目覚めても
瞼の裏で戦っている

その日観たことは
夜のうちに忘却の川から
記憶の海に流れていくのか
夢の網が
昨日の出来事にふさわしいものを
海の中から引き上げて
明け方の夢にしたのかもしれない

若武者は何のために戦うのか
ぼくの日常も闘いのようだ
負けるかもしれないけれど
出かけるために起きあがる

















自由詩 夢の続き Copyright 殿岡秀秋 2012-10-15 08:39:16
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