69に気をつけて
花形新次

葉山の小学校裏の
とあるホテルの一室
隣のカップルのけたたましくも
どこか空ぞらしい声に
虚しさを覚えながら
僕らは僕らなりに
じっくりと確かめ合おうとした矢先

鼻の先3センチで放たれた屁

屁は僕の周りの世界すべてを不透明にして
僕の理想は砕け散ったというのに

それでもきみはまだ一心不乱に
気に障る音を立てて吸い続けた

言葉を口にすることは
誇りを捨てることだった

20年経った今も
きみはあの時のことを
苦々しく思い出すらしい


自由詩 69に気をつけて Copyright 花形新次 2012-10-14 20:33:51
notebook Home 戻る