蜘蛛は見ていた
朧月

蜘蛛は謙虚だ
もっとたくさんの空間を
占領したっていいのに
わずかな場所に住んでいる

ある日物干しざおの上にいたので
なにをしているのかきいたところ
子供をうんでいるという

次の日
うす青い小さな蜘蛛が
物干しざおから糸をはっていた

おまえも巣をつくるのかい
私はきいたが
蜘蛛のこどもは糸をはくのにいそがしく
なんにもいわなかった

きづけば
私の手足にも蜘蛛のいとがくっついている
その先は
ずうっと遠くの空へつづいていた

ああそうか
いきているものは
みんなつながっているのか

青い蜘蛛のこどもは
そんな私のことをじっと見ていた


自由詩 蜘蛛は見ていた Copyright 朧月 2012-10-14 08:28:04
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