(仮)
木屋 亞万

まだ何もわからない頃に
考えるよりも先に
ためしに一つ作ってみようと思った

手が捏ね回していたら
くびれて腰になって
悪ふざけで尻ができ
二つつまんで胸になり
ゆびで裂いて股をつくった

人になってしまうと思い
顔はつくらなかった

戯れで無計画に作っただけだったのに
気付けばトルソができていた
ぷっくりとした尻の肉
やわらかな腹を押し上げる臓物の波線
胸の下をえぐるアバラの溝
指と目が形を再現していく
肩のゆるやかな丸み
鎖骨の切り込みから
すくっと生える首の切り株

腕も足も顔も無い
身体だけの胴体を両手で抱えて
そっと輪郭をさすった
手は自らが生んだとは思えぬ当惑の様子で
やわらかな触覚を楽しんでいた

うつくしい
愛しています
ずっと触れていたい

手は手自身が軽い気持ちで生んだものに
自由を奪われつつあるようだ


自由詩 (仮) Copyright 木屋 亞万 2012-10-13 09:39:50
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