(仮)
木屋 亞万
まだ何もわからない頃に
考えるよりも先に
ためしに一つ作ってみようと思った
手が捏ね回していたら
くびれて腰になって
悪ふざけで尻ができ
二つつまんで胸になり
ゆびで裂いて股をつくった
人になってしまうと思い
顔はつくらなかった
戯れで無計画に作っただけだったのに
気付けばトルソができていた
ぷっくりとした尻の肉
やわらかな腹を押し上げる臓物の波線
胸の下をえぐるアバラの溝
指と目が形を再現していく
肩のゆるやかな丸み
鎖骨の切り込みから
すくっと生える首の切り株
腕も足も顔も無い
身体だけの胴体を両手で抱えて
そっと輪郭をさすった
手は自らが生んだとは思えぬ当惑の様子で
やわらかな触覚を楽しんでいた
うつくしい
愛しています
ずっと触れていたい
手は手自身が軽い気持ちで生んだものに
自由を奪われつつあるようだ