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ホロウ・シカエルボク



少し肌寒くなり始めた街角には
人知れず落ちる涙のようなバラッドがある
まだ見たことのないそれを僕らもどこかで分かっている
僕がここから居なくなるとき
君がここから居なくなるとき


休日のまだ早い時間
すれ違う人もあまりなく
昨日を上手く忘れられなかった
悲しい酔っ払いの吐瀉物だけが
いのちを口籠ってばかりいる
口笛吹いてる点滅信号の下を潜るとき
幸せってきっとああいうものなのよって牧師みたいな笑顔で君は言った
時は流れてゆくこと
ちょっとしたつぶやきが更新され続けるタイムラインみたいに


あのとき瞬きするみたいに
僕らが更新されたらきっとなんとかなったんだ
残りの時間を数えることなく
おだやかな返答はきっとずっと隣りにあった
スターバックスの前の呑気な点滅信号は
きっと気まぐれなジョーク以外の
どんなものにも変わることはなかった


少し肌寒くなり始めた街角には
人知れず落ちる涙のようなバラッドがある
今日の街路にはやがて来る雨粒の溜息があり
すれ違う人たちはもう
夜を待っているような顔をして歩いている
僕らのつぶやきはタイムラインのはるか彼方でぷつんと消えて
知らないやつらだけがずっと楽しそうに返信を重ねている


化物みたいに器用な電話を持つことはやめた
結局のところそれは
ただ僕をあらわにするだけだから




自由詩 リツイート Copyright ホロウ・シカエルボク 2012-10-13 08:48:14
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