「恋と愛」
中川達矢

「ねえ、こい、と、あい、って何が違うと思う?」
「こ、と、あ、が違うと思う!」
「そうじゃなくて、意味だよ、意味」
「えーっとね、こいは魚で、あいは英語かな」
「そうでもなくて…、えーっと…、つまり、わたしのことどう思ってるの?」
「ユーだと思ってる!」
「だからそうじゃなくて…、もういいよ」
「もういいの? じゃあ、きみこそ僕のことをどう思ってるんだよ」
「え、あたし? うーん…、愛してるよ!」
「えー、恋してくれてないんだ」
「えっと、いや、恋してもいるのかな…」
「愛されているし、恋もされているんだ、やった。じゃあ、愛と恋、どう違うの?」
「えっと、えっと…、もう、いじわる!」
「最初に聞いたのはきみの方じゃないか」
「そうだけど…、もう、いじわる!」
「まあ、でも、恋も愛も一緒なんじゃないかな」
「そうなのかな、違うような気がするんだけど…」
「じゃあ、どう違うの?」
「気がするんだけど…、えっと、うまく言えないなあ…」
「わかったよ、説明してやるよ。こころの位置が違うんだよ、こころの位置が」
「え、どういうこと?」
「だから、文字通り、こころの位置が違うの」
「え、つまり、どういうことなの?」
「だ・か・ら、文字通り、心の位置が違うの!」
「よくわからないってば、もう」
「わからなければいいよ」
「もう、いじわる!」
「こいとかあいとか考えても、混ざり合って、変になるだけさ」


自由詩 「恋と愛」 Copyright 中川達矢 2012-10-11 22:22:00
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