うつむいてばかりいて、
気づきませんでした
見あげると
すべてを忘れさせてくれる 秋の空がありました
ぬけるような碧の その広がりは
人の小ささを教えてくれるために
あるのかもしれません
夏の 熱さばかりだった 紅茶が、
やっと 心をやすめるあたたかさを取り戻しました
山は秋色を深め
少しばかりいそぎながら 頬を染めるように
色付きはじめた
娘は、もっと小さな頃
この同じ場所で、たしかに
同じ午后の時
同じ空を 見ていた
それを思い出したのです
子どもという 傍若な
あわいフィルタ‐の 瞳を通して
**を見ていた気がするのです
一葉の最期に 美しさを鼓舞するのは、
命あるものの 定めのようなものなのですね
娘もまた 美しくありたいと願う
けして 容を愛でるためでなく
心の葉を色付かせる
冬の 冷たい仕打ちがやってくるまで
ほんの一時 今日は、
山色に心を染めているのでした