機械と水
中村葵

窓から覗くこころ

静謐と違えるような濃紺の夜空に
規則正しい月の呼吸音
今ここにあった形はもうここに無く
冴えた輪郭は残像でしかない

バスルームにたゆたう湯気

水面の上下で冷たく照らされ
分裂して増殖する無機質な定義は
まるで精緻な種子のような多重構造
けれどすべて曲線と透明でできている

機械は硬く、形を持つ
みずはやわらかく、かたちをもたない
 
伝えたいことはいつも情景で浮かびます
私はそれを形にしようとします
私の見る世界は確かに美しいのです
青い空、海、夜の闇、星、森、月
 
誰かに伝わることを願っています
ずっと
 
そこにあったものはもうここになく
規則正しく月は巡るけれど
機械と水は 世界を切り取る


自由詩 機械と水 Copyright 中村葵 2012-10-09 00:35:07
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