機械と水
中村葵
窓から覗くこころ
静謐と違えるような濃紺の夜空に
規則正しい月の呼吸音
今ここにあった形はもうここに無く
冴えた輪郭は残像でしかない
バスルームにたゆたう湯気
水面の上下で冷たく照らされ
分裂して増殖する無機質な定義は
まるで精緻な種子のような多重構造
けれどすべて曲線と透明でできている
機械は硬く、形を持つ
みずはやわらかく、かたちをもたない
伝えたいことはいつも情景で浮かびます
私はそれを形にしようとします
私の見る世界は確かに美しいのです
青い空、海、夜の闇、星、森、月
誰かに伝わることを願っています
ずっと
そこにあったものはもうここになく
規則正しく月は巡るけれど
機械と水は 世界を切り取る