はざかいの風
もっぷ

東北東の風が父さんを目指す秋晴れの午後
生きていればきょう何歳だったの
数えるのはやめている
教えてくれるのを待っている

東北東の風よ教えて
父さんはいまどこで何歳のお誕生日を
東北東の風よもっとやわらかに
そう三メートルくらいでわたしを撫ぜて

墓標の影はそんなものはない
あの供養塔はにせもの
寺の坊主はきっと裏切って

父さんを漢方の材料として
売ってしまっている
知ってる

東北東の風よ
どこに行けばこころを置けるの
父さんへの思いを
おめでとうのことづてを
いまのわたしの日日を
どこに行けば伝えられるの

そ知らぬふりの風よ
秋のコートの裾を握って
父さんが生まれたころにもきみはいたくせに
意地悪に素通りなの?

託したいだけなのに
涼しげに父さんのまなざしのように
逃げてゆく父さんの死に際のように
出会い損ねて泣いた冬のその前の

きみは東北東の風
冬の前に吹く風
冬を連れてくる風
父さんの死の前奏曲だった



自由詩 はざかいの風 Copyright もっぷ 2012-10-08 12:23:04
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