砂の城をもう一度
カマキリ
ここはかさぶたのない場所だ
えぐられた何かを振り返っては
また一つ、言えないものが増えるのだ
深海に落ちている忘れ物
ため息が道をひらいて
君の肩に不安なものをのせている
記号じみた暖簾をかき分けて
今までという言葉に蓋をかける
つぶつぶが嫌いな人のために
ひとかけらが苦手な人のために
あたためておいた飲み物を渡すのだ
旅人は狂ってしまって
くだけた円盤の上に座っている
怒りで細胞を燃やしてしまったぼくはこのありさまで
屈辱を楽しいものに変える回路を探している
大事な処方箋を預けていたのだが
ここはかさぶたのない場所だった
途方に暮れたぼくは
見えもしない誰かと砂の城を壊し続けている