落葉
ぎへいじ


この粗末な杖で
渓谷の深さを探りながら
対岸に渡り
平らな岩の上に荷物を置いた

紅葉は始まったばかりで

枝は葉を乗せて
上下に ゆったりと揺れ

葉は揺れながら 左右に小刻みに瞬いている


おーい
つぶやくような小さな声

独りぼっち
葉が舞って行く

おーい
散るには まだ早いぞー



一粒の種は木になり
枝を伸ばして冬を越えて春へ

葉として産まれてしまえば
散りはてて埋もれて行く


またひとつ舞って行く


ゆっくりと

彼らにとって 地面に向かって落ちて行く その空は
まだ 生なのか
すでに 死なのか
山深い渓谷に 独り 




それでも生きようと最後の空を見上げるなら
それは生なのか


今日は ここまでにしようわからない


俺にはまだ少し命が残っては いるはずなのだが
大地に帰るその日に
魂は彼らと同じ様な
その空を舞う事が出来るのだろうか


せいいっばい生きなくてはいけない



自由詩 落葉 Copyright ぎへいじ 2012-10-06 20:15:18
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