靴
もっぷ
つらい暗い夕暮れ
ひとりを噛みしめる時間
あとにしたカフェで飲んだ
クランベリーソーダを思い返している
霧雨のなか
あえてテラス席で
はじめたばかりのタバコ
慣れない手つきをごまかしながら
一度も失恋したことがない
と
うそぶいて
ルージュの影もない
顔を路に晒し
なみだのベールを
隠せないでいた
わたしは
潮時と
帰り道
電車でふた駅のところだったから
歩いたの
雨のしずくは優しく
わたしを撫ぜながら
落ちてゆく
この橋を渡りきればもう
部屋
のところで
佇んで
履いている靴
のことを考えている
わたしがあなたに
みえますか