月極のひと
たま

月極げっきょくさんは資産家だ
日本全国に空き地を持っている
でも、どこに住んでいるのだろう
月極さんのお家がない
そう思うと、ちょっとかわいそう

パートさんになった
月極で働くひとだ
国民保健は自腹
滞納は認められない
月極で生きるひとになった

黒いスーツ着て
黄金色の田んぼに立っているひとがいる
よく見たら、案山子だった
スーツを着た案山子は
ゴトウ洋服店のセールスをしていたのだ
でもねぇ、宣伝効果はあるのかなぁ

案山子の頭のなかに
カオスがある
カオスとともに生きるひとは
詩人なのかもしれない
屋根のない国に住む
月極さんなんだと思う

看板屋さんに憧れて
美術の先生にレタリングを教えてもらった
ケント紙をB1のパネルに水張りしてポスターをつくった
ドラッカーの「断絶の時代」
社会にでてほんとうに看板屋さんなった
親方に初めて仕事を任された
月極さんの駐車場だった

失恋をして
看板屋さんを辞めた
どこか遠くへ行こうと思った
東京ならかっこいいと思って
十九の春
都会の案山子になった
ひとりぼっちは好きだったし
品川にも、月極さんはいてはったから
ぼくはなんだかうれしくて
ここで生きようと思った














自由詩 月極のひと Copyright たま 2012-10-05 14:26:36縦
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