美しき日に坂道を上り また下り
ただのみきや

夏の雲は膨らんだ自我
眩暈 土砂降り 稲光


遥か上には秋の雲たなびく
天使の翼のように


美しき日に坂道を上り また下り
廃屋の漆喰は剥がれ落ち
背の高い草が住む
暗がりに揺蕩う幻の蒼さ


美しき日に坂道を上り また下り
ベニシジミの小さなリボンで飾られた
モンシロチョウの丁寧なお辞儀と
モンキチョウの酒癖の悪さ


訪れた寡黙な預言たちよ
幾重にも包まれた啓示の花びらよ


散り行くいのちの季節を前にして
なんと豊満な神の恵みよ


美しき日に坂道を上り また下り
白い足の黒猫がするりと隠れ
破裂するほど息を吸った
たった今 世界の栞となる


永遠をスケッチすれば
水のように流れ落ち


翼は紅色に染まり
わたしは風の中に消えて行く


自由詩 美しき日に坂道を上り また下り Copyright ただのみきや 2012-10-04 23:11:18
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