弓の音
月乃助


前ぶれは風のなか
雨のにおいのする
森は、騒き
心をみだす


      ( 誰もが平然と目をそむけるそこに、)


山の気はその密さをまし
やってくるものの 大きさをおしえてくれる
生きものは 息をひそめ
岩場のくぼみに 梢のしたに 身をかくした

雨のしずくが、ひとつ 屋根をたたいた
風の音が冷たいゆびとなり 髪を梳く


板張り
白い衣に 片ひざをたて
左腕を ただまっすぐに 忘れていたものをさぐりだすように 伸ばす
右腕は くの字の 持てる力のすべてをこめ


      ( どうしてこんなことを、するのだろう、)
      ( だれも 分かりようもないというのに、 )


目をそらさずに 闇になずむ夜を見据える
それは、17の番号のついている渦
社会の 変えることなどできそうにもない 規範にもにたそれに 立ち向かう
渦は、これからも かぎりなくやってくる



      ( ・・・ オロカナ ヤマメのぶんざいで、 )
 腕の緊張は、ふるえるほど



私は、逃げることも 休むことならなおさら
考えることを やめ
襲ってくる大いなるそれにむかって 心の矢を/私自身を はなつ



その目の中心を射抜くため
 指をとく


  今









自由詩 弓の音 Copyright 月乃助 2012-10-03 19:28:06
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