弓の音
月乃助
前ぶれは風のなか
雨のにおいのする
森は、騒き
心をみだす
( 誰もが平然と目をそむけるそこに、)
山の気はその密さをまし
やってくるものの 大きさをおしえてくれる
生きものは 息をひそめ
岩場のくぼみに 梢のしたに 身をかくした
雨のしずくが、ひとつ 屋根をたたいた
風の音が冷たいゆびとなり 髪を梳く
板張り
白い衣に 片ひざをたて
左腕を ただまっすぐに 忘れていたものをさぐりだすように 伸ばす
右腕は くの字の 持てる力のすべてをこめ
( どうしてこんなことを、するのだろう、)
( だれも 分かりようもないというのに、 )
目をそらさずに 闇になずむ夜を見据える
それは、17の番号のついている渦
社会の 変えることなどできそうにもない 規範にもにたそれに 立ち向かう
渦は、これからも かぎりなくやってくる
( ・・・ オロカナ ヤマメのぶんざいで、 )
腕の緊張は、ふるえるほど
私は、逃げることも 休むことならなおさら
考えることを やめ
襲ってくる大いなるそれにむかって 心の矢を/私自身を はなつ
その目の中心を射抜くため
指をとく
今