片見月
HAL

きみと最後に観た十五夜は
もうどのくらい前だったのだろうか

きみは教えてくれた
中秋の名月はもともと中国から
伝来したものだと

ぼくはそれは知っているよときみに答えた
じゃ十三夜は知ってる?と
きみは中秋の名月を仰ぎ観ながら訊いてきた

ぼくは十三夜は知らないと答えた
きみは二つの説があるけど
あたしは醍醐天皇が開かれた観月の宴が
風習化されたと言われる方が好きよと

そしてもうひとつきみは教えてくれた
十五夜にお月見をしたら
かならず十三夜にもお月見をするものなのよと
十五夜だけ観ることは片見月と言われるの

そしてそれを教えてくれた十五夜と十三夜が
きみと観た最後のお月見になってしまった

きみは十五夜と十三夜の月を
天の上から観ているのだろうか
天の上から観る十五夜と十三夜の月は
こうしてぼくが地上から観ている月とは違うのだろうか

ぼくはずっと片見月にならないように
ことしの九月三十日の十五夜の月は観た
もうすぐことしの十三夜が近づいてくる

毎年その月は唇をかみしめても滲んで観えるのだけれど
ことしの十三夜は十月二十七日
きっとまたきみを想い出しながら
仰ぎ観る月は滲んで観えるだろうけれど

だけどやっぱり十三夜の月をぼくは仰ぎ観るだろう


自由詩 片見月 Copyright HAL 2012-10-03 10:12:24
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